地方公務員安全衛生推進協会の2022年度(令和4年度)調査対象期間の調査では、精神疾患などで1ヶ月以上休んだ自治体職員は、2.1%であったことが判明しました。
10万人あたり換算で2143人で、2.1%となっています。
1993年度の調査開始以降、最も多い人数であり、10年前の約1.8倍となり、年齢別では、20代と30代が平均を上回っています。
では、なぜ自治体職員の休職(病休)は増え続けているのか、現場ではなにが起きているのか、その原因を解説します。
休職(病休)者数の推移について
一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会が調査した結果で、長期病休者数(10万人率)の推移では、下図のとおりとなります。
引用元:一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要 (jalsha.or.jp)」
平成25年度を基準として、ずっと右肩上がりとなっています。
特に、令和に入ってからの伸びが著しい結果となっています。
〇調査対象期間:令和4年度4月1日~令和5年3月31日
〇対象人数:約80万人
〇対象団体:351団体
・都道府県:47団体
・指定都市:20団体
・特別区:23団体
・市(人口30万人以上):73団体
・市(人口5~10万人):94団体
・町村(人口1~2万人):94団体
自治体職員の休職(病休)が多い理由や原因について
自治体職員の休職(病休)が多い理由や原因について、大きく3つに分けて解説します。
人員不足・過度な業務負担
人員不足による過度な業務、様々な要因による過度な業務負担があるため、休職(病休)になる人が増えています。
人員不足について
自治体の職員数は、業務量などから適正な人員となるよう計画的に決めています。
しかし、ほとんどの自治体では人口減少が加速していく中にあるため、自治体職員も併せて減らしていく方向性となります。
人口が減っているのに職員数が増えていくって考えると変ですよね。
つまり、ほとんどの自治体の職員数は減少傾向、頑張っても維持することに留まります。
その中で、業務はどんどん増えています。
過度な業務負担
行政は一度やり始めた事業は基本的に継続していきます。
しかし、継続している中で新たに事業を始めることが多いです。
それは、法律の改正であったり、事業をすることで補助金をもらえたり、国からの押し付けであったりと様々な理由があります。
最近の例を挙げると、給付金の支給があります。
非課税世帯への給付金、非課税世帯への追加の給付金、子育て世帯への給付金、均等割のみ課税世帯への給付金、定額減税の恩恵を受け切れない人への給付金など、ここ1~2年で様々な給付金事業が実施されています(未実施分も含む)。
この給付金支給は、国から自治体への丸投げといわざるを得ません。
給付金の支給業務は簡単ではありません。
自治体では、まず議会の承認を得て予算を取るところから始まり、給付金を交付するための交付要綱の作成やシステム改修の契約、対象者の抽出、送付文書の作成・発送、申請書の確認、支払いの事務などなど、まだまだやることはあります。
このような業務を、国会議員の一言でやらなくてはいけないのです。
もちろん、通常業務を行いながらです。
すべての給付金を1回でやってしまえば、業務量はかなり減って、無駄な税金を使わなくて済んだのに・・・。
このようなことが、日常茶飯事で行われるため、過度な業務負担となっています。
ハラスメントの問題
自治体職員に関わらず、ハラスメント問題は、社会の大きな問題となっています。
自治体職員はパワハラ(パワーハラスメント)やカスハラ(カスタマーハラスメント)などが、よくニュースになっています。
「自治体職員 パワハラ」と検索してみてください。
たくさんのニュースが出てきますので、パワハラが横行していることがわかります。
理不尽な要求やクレームなどのカスタマーハラスメントも、よくニュースで見ます。
1日に何十回も電話したり、窓口に何時間も居座り怒鳴り続けたりといった対応をしているとのニュースを見ることがあります。
しかし、ニュースになるのはほんの一部なので、実態では、かなりの件数があると思われます。
例えば、確定申告会場で、政治資金パーティ裏金問題の批判が相次いでいます。
確定申告会場は、税務署で実施しているほか、多くの自治体でも住民の利便性を図る観点から申告会場を設け、自治体職員が受付をしています。
その中で、問題を起こした政治家の批判、裏金について調査を実施しない税務署への批判を自治体職員が受けなければなりません。
小さな町では、職場以外でも相手と顔を合わせることがあるので、仕事でもプライベートでも精神を削られます。
このようなハラスメント問題から、精神疾患を引き起こす職員が増えています。
災害・パンデミックへの対応
災害やパンデミックが起きた時には、自治体職員がその対応を担っています。
通常業務に加え、これらの対応をすることになるため、勤務時間が大幅に増え、過労死ラインを超える残業を強いられる状況となります。
災害時の対応について
地震や津波、台風といった大きな災害のほかにも、大雨や高波など気象に関わる警報・注意報時に対応をすることになります。
大地震が起きて避難所が開かれることが想像しやすいと思います。
避難所は、自治体職員が張り付き、避難所の運営を行います。
簡易ベットの用意や食事の準備、避難者の体調確認、施設の管理などを突発的に行うことになります。
夜を徹して行う必要があることから、交代制とはいえ、かなりの業務時間となります。
さらには、避難所が長期化することで、避難者の不満が増え、その矢面に立たされることになり、長時間勤務に加えて、苦情対応に追われることで肉体的にも精神的にもダメージを負うことになります。
自治体職員自身も被災者であるため、より精神的に負荷がかかりやすいです。
パンデミックの対応について
新型コロナウイルス感染症の対応が、想像しやすいと思います。
感染を拡大させないための施策の立案、大規模なワクチン接種など急激に業務が増えていることがわかります。
しかし、このような突発的なパンデミックの対応があっても人員が増えることは、ほぼありません。
パンデミックは、すぐに収束する可能性がありますので、一度雇うと辞めさせることができないため、人員を確保することができないのです。
つまり、パンデミックなど突発的な業務が増えても、現状の人員で対処しなければならないため、業務の負担が増えてしまいます。
まとめ
自治体職員(公務員)は、毎日定時で帰れて楽な仕事という印象の方も多いと思います。
昔は、そうだったのかもしれませんが、現在は休職(病休)者が多く出る過酷な職場であることがいえます。
日常的に過労死ラインを超えて残業する部署もあるようです。
休職(病休)者の比率としては20、30代の若い世代の方が多いです。
自治体職員になって、楽に仕事ができる思っていたら・・・という思い込みがあり、現実とのギャップで休職(病休)になる人が多いのかもしれません。
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