海外で流行している「はしか(麻疹)」ですが、日本でも感染の報告が増えてきており流行する可能性があります。
一般的にはしかは、子どもの方が症状が重いですが、大人でも重症化することもあります。
また、はしかの感染力は非常に強く、世界的に大流行した新型コロナウイルスよりはるかに感染力が強いです。
まずは、はしかに関する基礎的な知識を押さえておきましょう。
はしかに感染した場合の症状
はしかに感染した場合は以下の症状が現れます。
はしか(麻疹)の症状
潜伏期 | 10日~12日 |
カタル期 | 38度前後の熱 せき・鼻水・目の充血・下痢など ほおの内側に白い斑点(コプリック斑) |
発疹期 | はしか特有の発疹 39度を超える熱 |
回復期 | 発疹は色素沈着した後に消える |
潜伏期
麻疹ウイルスに感染した後は、10日~12日程度の潜伏期間を経て発症します。
カタル期
発症の初期をカタル期といい、このカタル期が周囲への感染力が最も強い時期になります。
症状としては、38度前後発熱が3日間程度続き、咳や喉の痛み、鼻水、目の充血、下痢などの風邪の症状が現れます。
また、頬の内側に「コブリック斑」という白い小さな斑点のような湿疹が現れます。
発疹期
コブリック斑の出た翌日あたりから全身に発疹が広がります。
耳の後ろから首にかけて小さく赤い発疹が現れ、次に顔、胸、背中、手足の先へと順に広がります。
この発疹は1日~2日以内に全身に広がります。
また、発疹は時間が経つに連れ、発疹同士がくっつくため、大きくなり、色も濃く鮮やかになります。
熱については、カタル期の熱が一旦下がった後に、半日程度でしてから39度を超える高熱になります。
咳や鼻水の症状も悪化し、この時期がもっとも重症化します。
回復期
発疹期に3日~4日ほど持続した熱が下がってきます。
発疹は、徐々に色がなくなり、色素沈着がしばらく残った後、徐々に消えていきます。
重症化した場合の症状
はしかに感染することで合併症を起こし、重症化することがあります。
主に起こりやすい合併症は、肺炎・中耳炎・脳炎です。
なかでも肺炎と脳炎は、はしかの二大死因となります。
特に、脳炎は1000人に1人の割合で起き、なかには亡くなるケースもあるほか、重度の後遺症が残ることがあります。
治った後に発症する病気「SSPE」
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という重篤な合併症になる場合もあります。
このSSPEは、はしかが治ってから、4年~10年ほど経ってから発症することがあります。
麻疹ウイルスが脳内に持続的に感染して徐々に症状が現れてきます。
初めは、感情の不安定などの精神的な症状が起こり、次に運動機能の障害(字が書きづらくなる、うまく歩けなくなる)が起こり、体がぴくっと動く、不随運動が周期的にみられるようになります。
その後も進行していくと、意識を失うことや筋肉の硬直を引き起こし、死に至る可能性があります。
はしかの感染力について
はしかの感染力を比較するために、はしかとほかの病気の感染力を下表にまとめました。
感染力の比較
病名 | 基本再生産数 |
インフルエンザ(季節性) | 1.3人~1.8人 |
新型コロナウイルス | 2人~3人 |
おたふくかぜ | 4人~7人 |
風疹 | 6人~7人 |
はしか | 12人~18人 |
基本再生産数とは、免疫の持たない人の集団で1人の患者から平均何人に二次感染するかの指標です。
近年猛威を振るった新型コロナウイルス感染症は、2人~3人に対し、はしかは12人~18人となっており、はしかはコロナよりはるかに感染力が強いことが分かります。
感染経路
はしかの感染経路は、接触・飛沫・空気感染があります。
接触感染
直接触れ合うことや、ウイルスの付着した物に触れることで感染します。
飛沫感染
咳やくしゃみ、話をしているときに飛び散った飛沫を吸い込むことで感染します。
飛沫は水分を含んでいるため、すぐに下に落ちます。
下に落ちたウイルスに触れるものが接触感染のひとつとなります。
インフルエンザはこの飛沫感染で感染が広がります。
空気感染
空気中に漂うウイルスを吸い込むことで感染します。
ウイルスは軽く、空気中で漂うため、長時間浮遊し、遠くまで飛んでいきます。
あまり広くない室内であって、免疫のない人はほぼ100%感染します。
また、空調を共有している部屋であれば別の部屋からでも感染する可能性があります。
空気感染する主な病気は、はしかのほか、水ぼうそうや結核があります。
治療薬・予防方法について
はしか(麻疹)には特効薬がなく、有効な治療薬はありません。
そこで重要なのが、ワクチン接種です。
ワクチンの予防接種を行うことで、ウイルスに対する免疫ができるため、はしかの発症を予防する有効な手段となります。
ワクチンは、麻疹ワクチンと風疹ワクチンの混合である「MRワクチン」を使用するのが一般的で、1回目を接種し、1ヶ月経過後に2回目のワクチン接種を行います。
1回目のワクチンでは、93%~95%以上の免疫を獲得でき、2回目のワクチンで、97%~99%以上の免疫を獲得できるため、2回接種が有効です。
なお、現在では、1回目は1歳の時、2回目は小学校入学前の1年間に受けることになっていますが、年代によって予防接種のタイミングや回数が異なります。
母子健康手帳に接種履歴が記載されているので、確認してみてください。
まとめ
子どもは、予防接種を行っているため免疫を持っていることが多いですが、大人は予防接種を十分に受けていない人もいるため、免疫が不十分であることが多いです。
そのため、子どもより大人の感染が多いこともあります。
とにかく感染力が強く、感染した場合の合併症がこわい病気です。
有効な治療薬がない現状では、ワクチン接種で未然に防ぐしかありません。
MRワクチンは、8,000円~10,000円程度と高価ではありますが、自分や周りの人に感染させないため、ワクチン接種が不十分な方は、接種を考えてみた方が良いでしょう。
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