退職が決まり、有給休暇を消化中に「少しでも収入を得たい」とアルバイトを検討する人は少なくありません。
しかし、法律上は問題ない場合でも、就業規則や社会保険、税金のルールに注意しないと、思わぬトラブルに発展することがあります。
この記事では、有給消化中にバイトをしても大丈夫なのか、法的な観点からの整理、会社規則との関係、保険・税務の注意点、そして安全に進めるための心得まで、わかりやすく解説します。
有給消化中にバイトをするのは法律違反?法的な立場から整理
退職前提の有給休暇中にアルバイトをすることは、多くの人が「法律的に大丈夫なのか?」と疑問を持つポイントです。
ここでは、労働基準法や民法の観点から、実際の法的な位置づけと注意点を整理します。
労働基準法上の位置付け:有給は自由に使える権利
有給休暇は労働基準法第39条で認められた労働者の権利であり、休暇中の時間の使い方は基本的に本人の自由です。
法律上は「有給休暇中に別の仕事をする」ことを直接禁止する条文はありません。
したがって、バイトをしても直ちに違法とはなりません。
ただし、自由とはいえ、雇用契約上の義務や会社の規則に反しない範囲で行動する必要があります。
この点を混同するとトラブルに発展する可能性があります。
「法律上OK」であっても…実務上のリスクがある理由とは
法律違反でなくても、在籍中の行動は会社との信頼関係に影響します。
例えば、同業他社で働くことで情報漏洩の疑いを持たれたり、業務引継ぎがおろそかになると「職務専念義務違反」と見なされることもあります。
また、業務外の事故やケガが元職場の保険制度に影響する可能性も否定できません。
法律的な問題の有無と、実務上の安全性は切り離して考えることが大切です。
就業規則での兼業・副業禁止は要注意:会社で定められたルールの確認を
有給休暇中であっても、退職日までは「在籍中の社員」です。
そのため会社の就業規則や雇用契約に定められた副業禁止ルールが適用される可能性があります。
ここでは、ルール確認と違反時のリスクを解説します。
兼業禁止の規定に違反した場合の懲戒リスクとは?
就業規則に明確に「兼業・副業を禁止する」条項がある場合、これに違反すると懲戒処分や退職金の減額などの措置を受ける可能性があります。
懲戒解雇までは稀ですが、会社に損害を与えた場合は民事責任を問われることもあります。
退職間際であっても在籍中は契約義務が有効であるため、「もう辞めるから関係ない」という考えは危険です。
就業規則が曖昧な場合はどこに確認すればいい?人事・現場対応
副業ルールが明確でない場合は、まず就業規則を確認し、不明確な点は人事部や上司に相談するのが安全です。
メールや社内チャットで質問し、記録を残しておくことで、後にトラブルが発生した際の証拠になります。
また、規定がなくても「業務に支障をきたさないこと」や「会社の名誉を損なわないこと」は一般的な暗黙のルールとして存在します。
退職前提でも“在籍中”に変わりない:規則は依然優先
退職日が決まっていても、その日までは会社員としての義務が継続します。
これは、引継ぎや業務連絡、緊急時の対応などを含む「在籍中の責任」が残っているためです。
バイトを始める前に規則や職務内容を見直し、業務との競合や支障がないかを確認することが重要です。
保険や税金のダブル加入回避のための手続きと対策
有給休暇中のアルバイトでは、社会保険や雇用保険の重複加入、税金の申告漏れが起こることがあります。
思わぬ追徴課税や手続きトラブルを避けるため、制度上のポイントを理解しましょう。
雇用保険の二重加入を避けるにはどうすればいい?
有給消化中は元の会社で雇用保険に加入している状態です。
この期間に別の会社で雇用保険が必要な条件(週20時間以上、31日以上の雇用見込みなど)で働くと二重加入になる恐れがあります。
新しい勤務先には「在籍中であること」を正直に伝え、雇用保険に加入しない契約形態を選ぶなど調整しましょう。
社会保険の重複とその手続き(健康保険・年金)
社会保険は基本的に1つの勤務先で加入します。
有給消化中に新しい職場で条件を満たす働き方をすると、どちらの保険を適用するかの手続きが必要になり、遡及精算が発生する場合があります。
勤務条件を短時間にするか、扶養や任意継続制度を利用して重複を避けることが賢明です。
副業収入が20万円超の場合の確定申告の必要性
副業で得た年間所得が20万円を超える場合、会社員であっても確定申告が必要です。
特に有給消化中にバイトで高額収入を得た場合、翌年の住民税額が増え、元の勤務先に副業が知られる可能性もあります。
収入管理と申告義務を怠らず、源泉徴収票や経費の記録をしっかり残しておきましょう。
トラブル防止の心得:懲戒・印象・円満退職のためにすべきこと
法的には可能でも、現実には人間関係や会社との信頼維持が重要です。
有給休暇中の行動が退職後の人間関係や再就職先に影響することもあります。安全にバイトをするための心得をまとめます。
懲戒対象になる可能性:具体的には何が起こる?
在籍中の副業が業務に支障をきたした場合や会社の信用を損なった場合、懲戒対象になることがあります。
例えば同業他社で働き、情報漏洩の懸念を持たれるケースや、引継ぎ不備で業務停止を引き起こす場合です。
退職直前でも処分を受ける可能性はゼロではありません。
新しい職場への影響:信頼や入社前の印象への配慮
入社予定の会社が、有給消化中の行動を知ることもあります。
もしそれが「元の会社と揉めていた」や「規則違反をしていた」という印象になれば、信頼を損なう恐れがあります。
採用後の人間関係にも影響するため、慎重な行動が必要です。
短期・単発バイトのすすめと収入抑制(住民税対策)
在籍中は雇用保険や社会保険の条件を避けるため、短期・単発のアルバイトや業務委託契約を選ぶと安全です。
収入を抑えることで確定申告不要の範囲に収め、税金面での負担や会社への通知を避けられる可能性も高まります。
ベターな選択として、退職後に働くことを検討するメリット
トラブルや制度上のリスクを完全に避けたい場合、退職後にバイトを始めるのが最も安全です。
失業保険の受給要件にも影響せず、社会保険や税金の手続きもシンプルになります。
精神的にも安心して新しい仕事に集中できるため、長期的なキャリア形成にもプラスです。
まとめ:退職前提の有給消化中にバイトをしても大丈夫
有給消化中のバイトは、法律的には基本的に可能です。
ただし、在籍中は就業規則や契約上の義務が有効であり、社会保険や税金の手続きにも注意が必要です。
安易に始めると、懲戒や信頼低下など思わぬ影響が生じることもあります。
安全に進めるためには、会社規則の確認、勤務条件の調整、そして可能なら退職後に開始する選択肢も検討しましょう。
準備と配慮が、円満な退職と新しいスタートへの鍵となります。




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